当院で治療を受けられた方の報告(2021年脳腫瘍41例より一部抜粋)
当院で2021年に手術を受けられた、主な患者さんの画像と略歴です。髄膜腫(6例)、頭蓋咽頭腫(7例)や下垂体腫瘍(12例)、聴神経腫瘍(4例)の患者さんが多く手術を受けられました。重度の後遺症を生じた方は一人もいませんでした。また、後出血などで再手術となった患者さんも0でした。ほとんどの方が手術の前日に入院され、術後7日目で退院されています。手術時間は最短1時間22分から最長でも5時間8分、平均2時間10分でした。入院期間の平均は下垂体腫瘍で11.4日、良性脳腫瘍の方で8.5日でした。術後1日目の昼から食事、2日目からシャワー浴、3日目には洗髪もできています。
下記に当院で治療を受けられた方の5つの改善された症例についてご紹介いたします。
①下垂体腺腫(成長ホルモン産生腫瘍) 50代 男性
手の指が太くなる、舌が厚くなるなどの先端巨大症状と、両側の視野が狭くなる半盲症状、さらには以前からあった高血圧と糖尿病が悪化したため、総合病院の内科で検査を受けた患者さんです。検査の結果、成長ホルモンが非常に高く、脳下垂体にも腫瘍が見つかったことから、成長ホルモン産生腫瘍の診断で紹介されました。手術で腫瘍を全摘出し、6か月後の検査で成長ホルモンが正常の数値にまで低下しているのを確認しています。血糖値や血圧も下がり、薬もいらなくなっています。また、視力も0.3から1.2に改善しています。
②頭蓋咽頭腫 60代 男性
この方も、視力が低下し、両側が見えにくくなる症状がありました。それ以外には、体がだるい、集中力がなくなった、皮膚や爪がもろくなった、筋肉が衰えてきたなどの症状がありました。調べてみると、下垂体から分泌される成長ホルモンや副腎皮質ホルモンが非常に低下していました(下垂体前葉機能低下症)。MRIをとってみると、下垂体よりもさらに上に向かって大きな袋状の腫瘍が見つかりました。合併症を出さないように、鼻から前側の部分のみ摘出し、危険な後ろにある腫瘍は残しました(5ミリ)。この部分にはサイバーナイフという放射線治療を追加し、現在は全て消失しています。外来でホルモン剤の補充を行い、とても元気になりました。
③聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫) 40代 女性
4年前に右耳の聞こえにくさを自覚し、以前住んでいた近畿地方の脳外科病院を受診していますが、なにも異常がないといわれ様子を見られていた方です。その後、聴力は完全になくなり、左耳だけで生活されていました。最近になり、突然生じるめまいを何度か経験したため、当院を受診されました。MRIでは、音を聞いたり、バランスをとったりする神経に腫瘍を認めております。4時間の手術で摘出し、術後は全く後遺症なく経過しています。病理診断は前庭神経鞘腫という良性の腫瘍でした。
④頭蓋咽頭腫 60代 女性
大学病院で手術の説明を受けた際、後遺症がでる危険性が非常に大きいといわれた方です。手術で全部摘出する必要がない腫瘍であり、部分摘出とサイバーナイフ治療で経過良好です。術後、しばらく軽い記憶の障害が出ていましたが、どんどん改善してお仕事に復帰できています。成長ホルモンの低下により、体重の増加が始まっていたので、自己注射による補充療法を行っています。
⑤髄膜腫 50代 女性
右耳の聴力低下とめまい症状で来院されました。MRIでは聴神経腫瘍と同じ部位に腫瘍ができていました。画像上の違いは、腫瘍が半円形で耳の奥の骨にへばりつくように成長しています。これは髄膜腫の特徴的な形です。たくさん血流が入り込む腫瘍で、中年以降の女性に多くみられます。2~3センチの大きさで、あまり症状を出さない部位のものは経過観察でも問題ありません。この方は3センチ弱ですが、聴力や体のバランスに影響を及ぼす場所なので、治療の対象となりました。病理診断の結果は良性で、手術で全摘出して完治となりました。術後の合併症は全くありません。