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顔面けいれんと三叉神経痛について

顔面けいれんの患者さんへ

 片側顔面けいれんはその名の通り、片側の顔面が本人の意思とは関係なくピクピクと痙攣する疾患で、緊張や疲れなどで激しくなります。最初は目の下の筋肉のけいれんから始まることが多く、その後は徐々に口のまわりに拡がっていきます。けいれんも強くひきつったようになり、目がとじるほどひどくなります。女性に多く、30代頃から発症し始め、50~60代に多くみられます。私の治療例では、男女比は7:3、年齢は17歳から88歳、平均55歳でした。

 原因の多くは、脳幹から出た顔面の表情筋を動かす神経(顔面神経)の根本に、小脳を栄養する血管が強く圧迫して起こるといわれています。血管の圧迫が起こる原因としては、動脈硬化や、頭蓋骨の形が影響しています。また、同じように顔のけいれんをおこす病気がいくつかあり、症状や経過を詳しく聞くことで区別できます。そのため、この病気に詳しい医師の診察が必要です。

 治療はけいれんの強さや患者さんの希望によって、決定します。原因は神経と血管の圧迫なので、手術でこれを解除することで治ります。耳の後ろに10円玉くらいの開頭を行い、手術用の顕微鏡で顔面神経と圧迫血管を探し出し、血管を移動させます。全身麻酔をかけて、1時間から2時間程度の手術になります。術後は、すぐにけいれんが止まる方が殆どですが、経過が長かった方や、けいれんが強かった方では、しばらく時間をおいてから徐々におさまってくることもあります。

 手術の合併症としては、同側の聴力低下あるいは消失を起こす危険がありますが、手術中に耳に音を流して脳波を調べるモニターを付けることで、安全に行うことが可能です。また、血管の圧迫の仕方によっては、一時的に顔面まひを起こしたり、ものの飲み込みや発声が悪くなったりすることがあります。こうした症状は時間がたてば回復します。

 手術が受けられない患者さんに対しては、ボツリヌス菌を無毒化した注射剤を、けいれんしている筋肉に注射する治療がありますが、2~3か月で効果がなくなるので、継続して治療を続けなくてはなりません。

上図は右の顔面けいれんの場合の模式図で、圧迫血管を上方に移動させています

                                  

三叉神経痛の患者さんへ

三叉神経痛とは、顔面に激しい痛み発作をおこす疾患です。痛みは特徴的で、氷を急に飲み込んだ時のいたみに似ていると表現されることもあります。数秒間の激痛が顔のひたい(第1枝)、ほほ(第2枝)、あご(第3枝)の1つか、隣り合った2つの部分に起こります。これは三叉神経の感覚枝が3本にわかれているためで、診断上も重要な所見になります。また、トリガーポイント(引き金)が顔のどこかにあり、その部分に触れることで痛みが引き起こされることがあります。痛みを起こす行為としては、洗顔、歯磨き、ひげそり、食事などで、ひどくなると食事が食べられなくなり、やせ細ってしまう方も少なくありません。また、痛みは仕事や日常生活を脅かし、治療法が見つかる前の時代には、自ら命を絶つ人もいたほどといわれています。あごやほほの痛みで始まった場合は、歯や歯茎の痛みと思い、歯医者さんを受診して歯の治療をされてしまうこともあります。この病気も専門家が診察しないと、顔の痛みを起こす別な病気との区別が難しくなります。

 治療の第一選択は手術治療です。この病気も顔面けいれんと同様で、脳幹に入る三叉神経に、小脳を栄養する動脈が圧迫を起こすことが原因です。この圧迫を解除することで、ほとんどの方が激しい顔の痛みから解放されます。全身麻酔で通常1~2時間の手術です。また、全身状態がわるく手術ができない方の場合には薬物治療を行います。通常はカルバマゼピン(テグレトール)を少量から開始します。この薬は副作用も多く、使用する際には注意が必要です。また、徐々に効果が薄れていき、大量に使用しなくてはならなくなることが多いです。

手術の合併症としては聴力障害があげられますが、顔面けいれんの手術に比べ、危険性は高くありません。三叉神経の近くには必ず太い静脈が並走しており、この静脈の流れが悪くなると、術後の小脳がはれて再手術を要することがあり得ます。また、痛みは消失しても、不快なしびれが顔に残ることがあります。この場合のしびれは、ほとんど時間がたつにつれて気にならなくなります。

上図は左の三叉神経痛の場合の模式図です。圧迫血管は上方に移動されています

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